健康豆知識:タバコによる発がんのメカニズムは

Xi et al. (2013) Cigarette smoke mediates epigenetic repression of miR-487b during pulmonary carcinogenesis.
The Journal of Clinical Investigation 123: 1241-1261.
http://www.jci.org/articles/view/61271


「タバコを吸うと発がんリスクが高まる」というのは研究者のみならず、
多くの方がよくご存じの事実といえるかと思います。
今回、ご紹介する論文は「喫煙によって、どのような仕組みで肺ガン発症・進展するのか」という問いに対して、
一つの回答をもたらしました。

 


正常ヒト気道上皮細胞・肺ガン細胞に対して、タバコ煙抽出液を暴露したところ、
マイクロRNAの一つであるmiR-487bを抑制することがわかりました。
miR-487bを発現させることでWNTシグナルは抑制され、
ガンの進展が抑制されました。

 


WNTシグナル経路は細胞分裂に関与しています。
ガンは「細胞分裂の異常」とも言え、WNTシグナルの抑制によってガンの進展が抑えられたのかもしれません。

 


以上のことから、タバコの煙によってmiR-487bが抑制されることで、
肺ガンの発症・進展が起こっているのかもしれません。

 


マイクロRNAは遺伝子の発現・抑制等に関わっており、
さまざまな疾病・症状などのバイオマーカーとしても研究が進んでいます。

 


この研究で示されたように、
タバコの煙による発がんリスクの評価にはmiR-487bが利用できるのかもしれない、と感じました。

 

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